診断はどうするのか;
ほくろのように見える黒色から褐色の腫瘤であっても、基底細胞がんや悪性黒色腫などの悪性腫瘍、脂漏性角化症や老人性色素斑など良性腫瘍などの場合があります。
特にほくろのガンは悪性黒色腫(メラノーマ)と呼ばれ、悪性度が高く進行していると治療は広範囲切除術+リンパ節郭清+化学療法が必要になる皮膚の悪性腫瘍です。最近では分子ターゲット薬のオプチーボが治療の選択肢に入ってきて、治療手順や予後はかなり変わってきました。それでも皮膚科医も形成外科医も、いつも悪性黒色腫の心配が念頭にあって、見逃してはいけないと心がけています。ほくろの診断は、肉眼的診断(目で見て診断する)、ダーモスコープによる診断、手術で切除した標本を染色して診断する病理診断の3つの総合的診断になります。
肉眼的に癌を心配するほくろは、Asymmetry(対称性が失われている) Border(境界が不鮮明であったり色が周辺にしみ出している) Color (色むらがある)Diameter (直径が6,7mm以上) 加えて最近変化がある(例えば大きくなっている、色に変化がある、出血したなど)ものです。
ほくろのガン(悪性黒色腫 メラノーマ)を心配するときには; Excisional biopsy といってちゃんと局所麻酔をして、腫瘤から離して切除して病理検査に出します。肉眼的およびダーモスコープでメラノーマである可能性が高いときには、化学療法やリンパ節郭清のできる施設にご紹介して、術前より後々までの治療計画を立てたうえで生検する必要があります。あまりガンである可能性は高くない、またはガンであっても黒色腫ではなさそうな場合には、当院のような診療所で側方および深部のマージンを確保したうえで摘出します。
ほくろを切除する手術は小さいものは5~15分くらいで終わります。メラノ-マの悪性度が高いことを考慮すると、心配なほくろは切除して細胞を顕微鏡で検査(病理検査と言います)したほうが良い。
見た目でほくろを除去したい時には; 肉眼的診断とダーモスコピーによる診断で明らかに良性であるほくろは、その診断と患者さんの希望により、
1,そのまま経過を観察する
2,希望により手術やレーザーなどで切除または目立たなくする治療をする
3,手術で切除して病理検査も行う の3つの選択があります。
ほくろは色素細胞が集まって出来ています。そのためほくろを取ると、傷あとが残ります。傷がなるべく目立たない治療を選びます。
1、手術で切除する 保険適応の場合は 1個 9,000円程度 自費では5,500円~22,000円/個
手術をすれば、顕微鏡による検査(病理検査)ができます。きちんと外側で切除して病理検査をすればメラノーマの心配はなくなります。場所と大きさにより切除したほうが目立たないきれいな傷になります。
手術はくりぬき縫縮といって、周辺を丸くくりぬき1-2針かけて丸い陥没瘢痕にするやりかたと、紡錘形に切除し皮膚の下で糸をかけておき、細い線状瘢痕にするやり方と2種類です。どちらも1年近く傷の周辺を含めて、色が赤く茶色く目立ち、触ると固くなっています。1年経てば傷跡は目立たなくなります。普通は再発しない。
2、削る (炭酸ガスレ-ザ-、電気メス) 1個 5,500円
炭酸ガスレ-ザ-は、ほくろの細胞を焼きとばします。
麻酔のテ-プかクリームを30-60分塗るか、局所麻酔の注射をして施術します。
照射が終了すると、ほくろの厚み分の穴があいています。痂皮を作らないように、軟膏を多めに塗りスキントンテープや絆創膏を貼るまたはハイドロコロイド(キズパワーパッド)のテープを貼って、湿潤環境を保ってください。洗浄していただいて、消毒はしないで。痛くなったり赤く腫れたりしたら来院してください。1~2週で傷は治ります。
傷跡を小さくするために、ぎりぎりで蒸散させており、20-30%は再発します。下から茶色または黒のほくろの色が出てきたら、早めに来院して再照射しましょう。 炎症後色素沈着という赤い色、茶色い色がしばらく残りますが、最終的に1年経てば色は目立たなくなります。ほくろの厚みがあれば、その深さに応じて傷はへこんだり、場合によって肥厚性瘢痕といって、出っ張ることもあります。湿潤環境で治癒することが傷をきれいにする方法です
3、色を薄くする (フォトセラピ-、Qスイッチルビーレ-ザ-) 1個 550~1,100円(毎回)
しみ抜き用ルビーレーザーを照射します。1~3か月に1回ずつ回数をかけて、色を薄くしていきます。薄いかさぶたをなるべくとらないように、お化粧や洗顔をして下さい。かさぶたが早めにとれてしまうと、傷になります。
ほくろの厚みによって、2回くらいでほぼ色が消失する色素の層が薄いほくろから、厚みがないように見えても20回もかかるほくろまであります。色の薄いイボのようなほくろは効きません。
ほくろのメラニンを少しずつ飛ばしていく手技で、でこぼこが目立たないのが特徴です。厚みのあるほくろは、炭酸ガスレーザーで削ってから照射する場合があります。一度色がほとんどなくなったのに、しばらくして再発してくることがあります。
ほくろの治療のリスクと副作用
1,病理検査に提出しない場合には、悪性腫瘍を見逃すリスクがあります。レーザー照射をすると姿形が変わるので、診断がつきにくくなります。
2,瘢痕が(目立たないにしても)残ります。傷跡や色素沈着、でこぼこが気になる場合があります。
3,再発することがあります。
4,麻酔薬でかぶれたり、アレルギーを起こすことがあります。